「稼げるから辞められない」の罠
フリーランスとして働いていると、「稼げるけどしんどい案件」にぶつかることがあります。
納期がきつい、要求が多い、相性が悪い。でも単価は高く、生活費を考えると手放すのが怖い。
わたし自身も、独立して間もない頃はこうした案件にしがみついていました。
「次の依頼が来る保証はない」「これを逃したら、もう仕事がないかもしれない」
そうやって、自分を納得させていたのです。
でも――気づけば、「好きで独立したはずの働き方」が、会社員時代と同じようなストレスに変わっていました。
「辛い」と感じたとき、すでに限界は近い
あるとき、深夜にPCの前で泣きながら作業している自分にふと気づきました。
「なぜここまでして働いているんだろう」と。
クライアントは悪気があるわけではない。むしろ丁寧で、フィードバックも早い。
でも、自分の価値観と合っていない。
レスポンスの速さを求められる、土日も対応必須、言葉の温度が合わない。
たとえるなら、「靴擦れしているのに、ブランド物だから我慢して履いている靴」のような状態。
合っていないと分かっていても、履き続けることで自分をすり減らしていたのです。
勇気を出して「切った」日
悩んだ末に、わたしはその案件からフェードアウトではなく、きちんと「辞退」することにしました。
「スケジュールやスタイルの相性が合わず、今後はご一緒できないと思います」と丁寧に伝えて。
言い出しづらくて何日も「やっぱり明日にしよう」と後ろ倒しにしてしまいました。
月収の半分以上を占めていたので、怖さも大きかった。
けれど、その直後から、不思議な変化が起こりはじめたのです。
手放したら、入ってきた“新しい風”
案件を手放して2週間ほど経ったある日、以前から気になっていた知人の紹介で、新しい案件の相談が入りました。
驚いたことに、その仕事は「自分の得意分野×自分のペースで進められる」内容でした。
しかも、納期に余裕があり、相手もこちらを信頼してくれていて、やり取りも心地よい。
結果的に、以前の「稼げるけど辛い案件」とほぼ同じ金額を、ストレスなく得ることができました。
さらには、そのクライアント経由で「〇〇さんに紹介したい人がいて」と新しいつながりが生まれ、気づけば心地よい人間関係が連鎖のように広がっていたのです。
本当に欲しい仕事は「心の余白」にしか入ってこない
いま思えば、以前の自分は“埋まっていた”のだと思います。
自分の本音も、時間も、頭の中も、全部「しんどいけど我慢」な案件でぎゅうぎゅう。
でも、「余白」が生まれたことで、自分らしい仕事や人が“入ってこられる”スペースができた。
これはフリーランスに限らず、どんな働き方の人にも共通することかもしれません。
不安に勝つには、「基準」を決めておくこと
とはいえ、「切る」という選択は簡単ではありません。
わたしがやって良かったと思うのは、「続けるかどうかの基準」を事前に決めていたことでした。
たとえば:
- 平均稼働時間が1日8時間を超える
- 休日にも作業が必要になる
- やり取りで心がざわつく
- 自分の専門性を信頼してもらえない
こうしたチェック項目を1つでも満たす案件は「注意」、2つ以上で「検討」、3つ以上で「断る」というルールに。
この“マイルール”があったからこそ、不安を感じながらも決断することができました。
結果的に、収入も人間関係も豊かになった
面白いことに、辛い案件を辞めたあとは、「なぜあんなに我慢していたんだろう」と思うくらい、心が軽くなりました。
- 体調が整い、朝すっきり起きられるようになった
- 週末に仕事のことを考えず、安心して過ごせるようになった
- 仕事に対する自信が少しずつ戻ってきた
結果的に、クオリティも上がり、「信頼されて紹介される」流れができ、収入も回復しています。
まとめ|「今の仕事を続ける理由」が“お金だけ”なら、一度立ち止まってみて
あなたが今している仕事、それは「未来に繋がっていく働き方」ですか?
それとも、「ただ今月のためだけ」の仕事ですか?
もちろん、生活が厳しいときに収入を優先するのは必要です。
けれど、心がすり減っているときほど「余白を作る」ことにこそ価値がある。
「合わない案件を断る」のは、怖いです。
でもそれは、「本当に自分らしい仕事が入ってくるためのスペース」を作る勇気でもあるのです。
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