はじめに|「自由に働ける」は本当か?
大手企業に勤めながら、「もっとスピード感ある仕事がしたい」「小さな組織で裁量を持って働きたい」と考える人は多いでしょう。
確かにベンチャー企業は柔軟で、やりがいのある仕事も多く存在します。しかし、「自由」や「成長」という言葉の裏には、覚悟しておくべき現実も存在します。
今回は、大企業出身のあなたに向けて、実際にベンチャーに飛び込んだ人が直面する5つのリアルを、忖度なくお伝えします。
「肩書き」は武器ではなくなる
大手企業の名刺は、それだけで信頼を得られる強力なブランドです。しかし、ベンチャーに転職すると、その肩書きはまったく通用しない場面が増えます。
たとえば:
- 商談で「前職はどこですか?」と聞かれることがなくなる
- 「〇〇出身」という安心感より、実際に成果を出せるか?が問われる
- 名刺よりも、SNSでの発信力のほうが信用につながる
つまり、今までの実績や知名度に頼れない世界に入る覚悟が必要です。
「決まってないこと」が当たり前の世界
大企業では、マニュアル・手順・稟議フローが整っているのが当たり前。一方、ベンチャーではそもそも「前例がない」ことが前提です。
よくある事例:
- 「この業務ってどうやるの?」→「まだ誰もやってないから作ってみて」
- 稟議書がない、経費精算のルールも曖昧
- CTOや社長に直接チャットで「それやる意味ある?」と問われる
不確実性に強くないと、「何も決まってないのに進める」という働き方にストレスを感じやすいです。
想像以上に「雑務」が多い
「戦略を描く」「プロダクトを成長させる」など、華やかな仕事を想像しているとギャップがあります。現実は、メンバーが少ない=全員がなんでも屋です。
ベンチャーあるあるな業務:
- 契約書の印刷と郵送
- オフィスの備品管理
- イベント時の荷物運搬や会場設営
- Slackの使い方マニュアルを作る
「この仕事、自分がやるのか…?」という瞬間が何度も来ます。
人間関係が密すぎる(いい意味でも悪い意味でも)
大企業のように、物理的にも心理的にも距離を置ける環境とは異なり、ベンチャーは社内の人間関係が極めて濃いです。
その結果:
- ランチも飲みもだいたい全員参加
- 何かトラブルが起こると、全員でシェア・議論
- 嫌でも社長と毎日顔を合わせる
密な関係性ゆえに、合わない人がいると逃げ場がないことも。距離感のコントロールが苦手な人には、息苦しく感じるかもしれません。
“安定”とは真逆。会社が潰れるリスクと隣り合わせ
大企業で働いていると、給与は振り込まれて当たり前、社会保険も完備。しかし、ベンチャーは資金繰りが不安定な場合も多いです。
注意すべきポイント:
- 資金調達がうまくいかなければ、賞与カット・給与遅延も現実に
- 社会保険や福利厚生が未整備なこともある
- 「明日から撤退します」と言われることも
つまり、「次のキャリアも考えながら働く」ことが前提の働き方になります。
でも、それでも「ベンチャーで働きたい」なら
ここまで読んで「やっぱり無理かも」と感じた人は、それが自然な反応です。実際、転職後半年で辞める人も少なくありません。
でも、それでも心のどこかで「ベンチャーで挑戦してみたい」と感じるなら、その気持ちは大切にしてほしいと思います。
なぜなら――
「自分の頭で考えて、自分の力で前に進む」経験は、何にも代えがたい価値になるから。
失敗しても、それはあなたのキャリアの土台になります。安定の中にいながら不満を抱えるよりも、自ら選んだ不安定の中で成長を掴む。それもひとつの賢い選択です。
転職前にやっておくべき準備リスト
転職後に「こんなはずじゃなかった」とならないために、以下の準備をおすすめします。
✅ 自分でスケジュール管理ができるようにしておく
ベンチャーでは誰も管理してくれません。タイムマネジメントは自己責任です。
大手でももちろんスケジュール管理をしてきたかと思いますが、上司のマネジメント下におけるものだったかと思います。
ベンチャーのマネジメント層は多くがプレイングマネージャーのため、本当に放置されて、納期直前に「なんで進めてなかったんだ」と詰められることも少なくありません。
✅ 副業やプロジェクト単位の仕事を経験しておく
複数の仕事を並行して進める力を鍛えておくと、ベンチャーでも強い武器になります。
ここで大切なのは、クラウドソーシングサービスによくある業務代行や作業系の案件ではなく、しっかりとプロジェクト単位で参画できる案件を選ぶことです。
安価で買い叩かれるのではなく、責任を持って実績を積み上げていく経験が必要です。
まとめ|「覚悟」よりも「自分の軸」が大事
大手企業からベンチャーに転職するには、確かに覚悟が必要です。しかし、それ以上に大事なのは「自分が何を求めているか」という軸を持つこと。
- 成長したいのか
- 自由な働き方がしたいのか
- 何かを創りたいのか
軸が明確であれば、どんな困難も乗り越えられます。そして、ベンチャーでの経験はきっと、あなたのキャリアに「血の通った強さ」を与えてくれるでしょう。