報酬未払いに遭ったら、最初にするべきこと【フリーランス・個人事業主】

泣き寝入りフリーランス

おそらくフリーランスの多くが遭遇したことのある「報酬未払い」問題。

実はその大半が泣き寝入りしているそうです。理由としては『どうすればいいのか分からない』『揉める方が面倒』『仕事が忙しく回収に費やす時間がない』など。

気持ちは十分分かりますし、私も独立当初はいくつも取りこぼした報酬があります。

しかし、しっかり知識をつけておくことによって、多くの場合はしっかりと全額回収が可能です。今回は、実際に報酬未払いに遭遇してしまった際にやるべきことをまとめていきます。

まず最初にするべきこと

電話相談

まずはプロに相談してから動き始める

報酬未払いに遭遇した際、まず最初にすべきことがあります。それは「プロへの相談」です。

自分で催促したくなってしまう気持ちは重々承知ですが、初動の対応を誤るとこんなことにもなりかねません。

うまく言いくるめられて支払い期限の延長に、泣く泣く了承させられた
相手側の心象を害して、意地の張り合いになってしまった(本来は払わない方が悪いのですが、そもそも入金が遅れるような相手なので、そのような常識が通用しません)

相手に催促したい気持ちをグッと堪えて、まずは味方となってくれるプロに相談しておくことが大切です。そして客観的な意見を聞きながら、冷静に今後の対応を考えることが確実な回収に繋がります。

誰に相談すればいいの?

では、具体的にはどこに相談すれば良いのでしょうか?

個人契約をしていたり、保険に加入している方は、各種弁護士相談サービスを利用するのがおすすめです。最初の相談は無料の場合が多いため、それで賄える場合が多いでしょう。

しかし、そのようなサービスに加入していない方も多いはず。その場合は、下記の公的なサービスがおすすめです。

【公式】フリーランス・トラブル110番

こちらはフリーランス・個人事業主の方が、契約上・仕事上のトラブルについて弁護士に無料で相談できる相談窓口として、国の委託によ設置されたものです相談は無料で、弁護士に直接相談することが可能です。

ただし非常に人気のため、電話はかかりづらいです。何回かかけていればそのうち繋がりますので気長に待ちましょう。受付の方に予約をして、混んでいるときは数日後の予約となります。

 フリーランスを守るために設置された機関ということもあり、物腰も柔らかく、親身になって相談に乗ってくれる弁護士さんが多い印象です。基本的に味方なので、安心してかけてみてくださいね。

参考:厚生労働省HPフリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ

何を聞けばいいの?

まずは、報酬未払いにあって困っている旨、これからの対応をどのようにすれば良いのかを相談しておいてください。案件の状況や現状に即したアドバイスをいただけます。また、もし催促しても支払われなかった場合の対応など、今後の動き方についても聞いておきましょう。

どうしても解決しない場合の回収方法

裁判所

実際に、プロのアドバイス通りに動いてもうまくいかなかった場合、法的な手段に訴えることになります。そのような事態にならないのが理想ですが、ここまで揉めてしまうこともあるのが現実です。

実際に行動に移す場合は、いずれの手段をとるのが良いのか、これもプロに相談するのが鉄則です。

「いきなり訴訟を起こしたことによって、相手が頑なになってしまって逆に物事を複雑にしてしまった・・」「準備をしなかったことによって、証拠不十分で負けてしまった」という失敗をしては元も子もありません。

ただし、「どのような手段をとることが出来るのか」を頭に入れておくこと自体は大切です。これらを知っていることによって、自分自身の安心感にも繋がり、相手側の減額交渉などに乗らずに済むためです。

では、具体的にはどのような債権回収方法があるのか見ていきましょう。

和解斡旋への申し込み

これは上記でご紹介したフリーランス110番で申し込むことができます。

当人同士の話し合いでは、どうしても個人事業主の立場は弱くなってしまうもの。このような場合に、実際にプロとして活動している弁護士に、無料で和解の斡旋をしてもらえるサービスです。

具体的には、未払い当事者との和解の場に弁護士が同席してくれることにより、建設的な解決をサポートしてくれるものとなります。あくまで第三者としての中立的な立場でのサポートとなるため、自分の代理人となってくれるわけではありません。しかし、弁護士が入るということ自体が相手への圧となり、話し合いがスムーズに進む可能性が高くなります。

内容証明郵便を利用した催促

チャットやメール、電話で催促することで解決する場合もあるのですが、その場合はあくまで「忘れていた」「手続きミス」の場合が殆どです。

分かっているのになんだかんだと理由を付けて払わない相手には、より正式な手段で連絡しておかなければなりません。メールなんて届いていない、電話でそんなこと言われていないなどと平気でとぼける相手には、言い逃れの出来ない方法で「催促した」という証明をしておくことが必要です。

その際に便利なのが、内容証明郵便

内容証明郵便とは下記のようなものです。

  • 郵便局の窓口で手続きすることで送付できる郵便方法
  • その際、送付主・送付先・発送日などの内容が郵便局に記録される
  • また、送達した際もその証拠が郵便局にて記録される

このように、先方に書面を送った事実、先方が書面を受け取った事実の双方が記録として残ることが特徴です。

裁判所を利用した支払督促

内容証明郵便にて催促しても無視されてしまう場合も多いかと思います。その際には、訴訟するしかないのかな・・と思い、その費用を考えて諦めてしまう方が殆どです。

しかし、実は訴訟より前にできることがあります。それが「支払い督促」です。

  • 裁判所で手続きすることによって裁判所から送付してもらう督促状
  • 異議の申立期間が定められており、その期間内に異議を唱えなかった場合、即座に強制執行が可能

 逆に、異議を唱えられた場合は訴訟に移行してしまうというデメリットもあります

この方法は、訴訟に移行しても構わない場合には効果は抜群です。相手が個人事業主・フリーランスだからと軽く見ているだけの相手なら、裁判所から通知がきた」ということ自体で、心理的なプレッシャーをかけることができます。また、「いざとなれば訴訟もいとわない。絶対に泣き寝入りしない」ということの意思表示ともなります。

少額訴訟

これは支払督促より更に強制力のある手続きです。主に、決や調停調書というかたちで決着をつけることで債権の回収を実行しようとする方法です。

こちらは、弁護士に依頼しても良いのですが、費用がかかるため、個人で訴状を作成する人も多くいます。そこまで難しいフォーマットでもないため、インターネットで検索して他の方の経験を参考にしながら作成しても良いかもしれませんね。

参考:法務省HP『少額訴訟手続について

考え方で大切なこと

アイスコーヒー

債権回収は非常に時間や精神的負荷のかかる作業です。無駄な時間を使わされて、その分の費用まで請求したくなりますよね。

しかし、ここで感情的にならずに冷静に対処することは、きっと自分の身になるはずです。

目的は何なのかを見失わず、絶対に債権回収という目的を達成するために必要な考え方とは、どのようなものなのでしょうか。

「泣き寝入りは絶対にしない」と決める

まず最初にここが大切です。

『少額だし、自分の時間を割く方がもったいないから諦めよう』などと思ってしまうのも仕方ありません。それだけ骨の折れる作業ですよね。

しかし、だからこそ債権回収が成功した際はきっと自分の自身に繋がるはずです。自分は泣き寝入りしなかったんだ、という成功体験を積んでいくことが、今後の自信にも繋がります。

対価を支払わない相手はもはや「クライアント」ではない

  • お世話になったし・・・
  • これからの関係性を考えると・・・

と思ってしまう人もいるかもしれません。

しかし、報酬未払いはむしろそういった関係性の方の間で発生することが多いものです。

見ず知らずの相手なら最初からしっかりとした契約書を交わして取引を開始するが、昔の恩人の依頼だから言い出しずらかった。なんとなくなあなあに案件がスタートしてしまったので、自分も悪い。
共通の知人が多い相手なので、今後の気まずさを考えると躊躇してしまう。
折角依頼してくれたのに申し訳ない

などの理由で泣き寝入りを迷っている方はいませんか?

しかし、いくらこれまでお世話になっていた相手だとしても、今目の前にいるその人は「自分の時間を搾取した人」「自分を無料で利用しようとしている人」です。悲しい気もしますが、もはやクライアントでも何でもありません。むしろ今後のお付き合い自体をやめるべき相手です。

ここに気を遣って得られるものはなんでしょうか・・ということを考えてみると良いかもしれません。

「目的は債権回収」ということを忘れない

相手に対して怒りの感情を覚えてしまうこともあるかと思います。しかし、感情的になって得することは1つもありません。

相手への怒りは、債権回収後のお付き合いをやめることで良しとして、「目的は債権回収」ということを忘れないようにしましょう。

相手の性格によっては、最初から強硬手段に出ると逆切れされたりする場合もあります。悔しいですが下手に出た方がスムーズに進み、自分の時間を無駄にしないことも多いのです。

そのあたりの兼ね合いは、上記にご紹介したフリーランス110番などの公的な機関で相談しつつ、冷静に対応するよう心掛けるのが得策です。

まとめ