親がASDであると気づいたとき
大人になってから「自分の親はASD(自閉スペクトラム症)の特性があるのでは」と気づく人は少なくありません。
振り返ると、幼少期から次のような体験をしてきたケースが多いです。
- 自分の気持ちを話しても「気にするな」と返される
- 褒められるよりも否定や指摘が多い
- 親のこだわりや気分に合わせて生活してきた
- 他の家庭と比べて「普通じゃない」と感じた
これらは「親子関係の不全」と片付けられることもありますが、実はASD特性によるすれ違いが背景にある場合があります。
カサンドラ症候群とは
カサンドラ症候群とは、ASDの特性を持つ家族と関わる中で、
- 感情が通じない
- 共感してもらえない
- 理解されず孤立する
といった経験を積み重ね、強い孤独感や抑うつ感を抱える状態を指します。
配偶者に多くみられるとされますが、親がASDの場合も同様の状況に陥りやすいのです。
子どもが長年にわたり「理解されないまま育つ」ことで、心に深い影響が残ります。
親がASDの場合に起こりやすいこと
親がASDのとき、子どもは次のような悩みを抱えることが多いです。
- 共感の欠如:気持ちを話しても「そういうのは無駄」と言われる
- 過度なこだわり:親のルールに従わざるを得ず、自分の意思を抑えがち
- 比較による劣等感:周囲の家庭と比べて「自分だけ普通じゃない」と思う
- 孤独感:他人に相談しても「親なんだから仕方ない」と理解されにくい
これらはすべて「自分のせい」と受け止めやすく、結果として自己肯定感が下がる原因になります。
自己肯定感が下がる理由
心理学的に、自己肯定感は「自分が認められた経験」によって育ちます。
しかし、ASDの親から十分な共感や承認が得られない場合、
- 「どうせわかってもらえない」
- 「私には価値がない」
といった否定的な思考パターンが形成されやすくなります。
この積み重ねが、カサンドラ症候群のような孤独と自己否定を強めていきます。
カサンドラ症候群的な孤独を和らげる対策
感情を認めて言語化する
まず大切なのは、これまで押し込めてきた感情を「自分のもの」として認めることです。
- 日記に書く
- 信頼できる人に話す
- カウンセリングで言葉にする
「悲しかった」「寂しかった」と認めるだけで、自己理解が進みます。
親との距離を調整する
ASDの親に「共感してほしい」と過度に期待しすぎると、毎回落ち込むことになりがちです。
- 会話は必要最低限にとどめる
- 会う頻度を調整する
- 「親にはできないことがある」と受け止める
親との距離を柔軟に変えることは、心を守るために有効です。
自分を認めてくれる場を持つ
親から得られなかった承認は、外の世界で補うことができます。
- 趣味のコミュニティ
- 仕事やボランティア活動
- 同じ悩みを共有できるグループ
「受け入れられる経験」を積み重ねることで、自己肯定感は回復していきます。
小さな成功体験を積む
自己肯定感を回復するためには、大きな目標よりも「小さな達成」が有効です。
- 1日のToDoを一つ完了させる
- 散歩を続ける
- 家事を10分だけやる
「今日もできた」と思えることが、自分を肯定する土台になります。
専門家に相談する
一人で抱え込むのは危険です。
心理カウンセリングや医療機関を利用すれば、客観的に整理する手助けが得られます。
特に「カサンドラ症候群 対策」を扱う専門家は、親との関係で悩む人に有効なアドバイスをくれることがあります。
親に過度な期待をしない
ASDの特性を理解することは、自分を守るために重要です。
「共感が得られないのは、自分に価値がないからではなく、相手の特性によるもの」と捉え直すと、心が軽くなります。
親を変えるのではなく、自分の心の持ち方を変えることが有効です。
自分の人生を優先する
「親を支えなければ」と思いすぎると、自己犠牲に陥ります。
しかし、親よりも自分の人生を優先してよいのです。
- 趣味や友人との時間を大切にする
- 自分の家庭や仕事を第一にする
- 「親のため」より「自分のため」に時間を使う
これは冷たいことではなく、心を守る健全な選択です。
相談できる支援先リスト
悩みを一人で抱え込まず、支援先を活用しましょう。
- 発達障害者支援センター
全国に設置されており、ASDに関する相談や家族関係の悩みを受け付けています。 - 精神保健福祉センター
うつ状態やカサンドラ症候群的な疲れに対して無料相談が可能。 - 子ども家庭支援センター
親子関係や家庭内問題に対応。地域に根ざしたサポートが受けられます。 - 心理カウンセリング(民間)
継続的に心を整理したい人におすすめ。オンライン相談も増加中です。 - 自助グループ・ピアサポート
「親がASD」という共通点を持つ人と話せる場。孤独感を和らげる効果があります。
まとめ
親がASDである場合、子どもはカサンドラ症候群のような孤独や自己肯定感の低下に悩むことがあります。
しかし、
- 感情を認めて言語化する
- 親との距離を調整する
- 外の世界で承認を得る
- 小さな成功体験を積む
- 専門家や支援機関に相談する
といった行動をとることで、心を守ることは可能です。
「親に理解されなかった=自分の価値がない」ではありません。
親の特性と自分の価値を切り離して考え、自分の人生を優先することこそ、自己肯定感を取り戻す大切な一歩です。